何時もより遅く家路についた。

そんな日に私はあの人に合ったのだった。






ストロベリーキャンドル 01










町外れに住んでる、変わり者の一家の一番近い家に住ん
でる私は、何時もとは違う物音に辺りを見渡した。


とは言っても私は子供のころに視力を悪くしたためメガ
ネ無しの今見えるものも少ないのだけれど。

「嫌だ―――本棚の整理なんか明日にすれば良かった……」

少し歩く足を早め、街灯の少ない道をセカセかと進んで
行く。

妙に胸騒ぎがする。

やっと家に着き、ふと隣の家へと目線を向けると……。

燃えている!

隣といっても遠い其処は、闇夜に赤々と炎を吹き上げ、
辺りを照らし出していた。


「なっ・・・」

暫し呆然とソレを眺めていたけれど。はっと我にかえる。


「かっ火事!!」

此処は町外れ。
人に聞こえる訳が無いと思いつつも、叫びながら必死に
なって駆け出していた。

必死に走って行った先には、ゴウゴウと燃える家と、長
身の人影とがポツリと立たずんで居た。


私は急いでその人影に駆け寄っていき、がっしりとその
両手を握り締めた。

逃げ出す事の出来た此処の住人かと思ったのだ。

「気を確りもって下さい」

口から出たのはそんなお粗末な言葉で、自身にガックリ
する。

でも、気が付くと視界がクルリと変わっていて、いっき
に気分が驚きへと変わっていた。

「お前此処には何の用で来た?」

馬鹿にした様に問われ、キッと顔を上げその声の主を見
上げ、再び固まってしまう。

中々答えない私に、余計に馬鹿にしたような笑みを浮か
べ、手に持った何かの枝を首元に押し付けて来た。

「何するのっ!いくら気が動転しているからって酷い
わ!そんな事よりも早く助けなくちゃ」

近くに来てもボヤけているその顔に指を突きつけてやる。


「ほぅ・・・」

何か珍獣でも見付けたように含みのある息を溢すと、目
の前の男がユラリと動く。

それを確認すると私は叫んだ。

「早く!」

押さえ付けるのが弛くなった隙に、バッと飛び出して、
一目散に駆け出す。


男が動いたのやっと正気になったと感じたからだ。

でも、少しも走らないうちに、クラリと視界が歪み、その視界に男が一瞬映り
こんだ時には、私の意識は薄れてしまっていた。