この邪魔な石の中から、この間のいけすかない男がを見下ろしているのが分かる。
何かたくらんだその目は、昔よく見かけたものとそっくりで嫌気がした。
わざとらしいセリフと行動だ。
「これはすまない、手を」
「いえ」
「今日からよろしくお願いします。ルシウスさん」
が手を差し出し、名前を呼ぶ。
「いや、ここを自分の家だと思ってくれていいい」
男の手がの手をとって握手をかわしている。
イラっとした。
私は、男の触れた指から魔力を無理に引きずり込んだ。
男は顔を歪めて、手を離す。
いい気味だ。
本当は攻撃するつもりだったが、まあ、コレもコレで痛い目にあわせたのだから良しとする。
を見下した行動には我慢がならなかった。
その後、部屋の中で一人だけになると、はこの指輪に手を伸ばした。
すると、突然が床へ倒れこんだ。
指輪へは急激に魔力が吸収されていく。
「・・っ!離せ!!!」
慌てて飛び出した時には遅かった。
暴走した指輪はの魔力をも吸い込んでいく。
「・・っ!離せ!!!」
むりやり指輪から手が引き剥がす。
と、が手を伸ばして来た。
「触れるな」
今は触れれば又魔力を吸ってしまう。
なをも伸ばされる手に何とも言えないやりきれなさを感じる。
「・・・・っ」
「あなたは、この間の人?」
「ここに居て、・・・・聞きたい事があるの。」
魔力が無くなったせいか、急激な疲れからか、は瞼を重そうに持ち上げる。
それでもなお伸ばされる手。
「わかった。わかったから、今は抗うな」
そう言うと、安心したのか、ゆっくりと目が閉じられた。
私はゆっくりと瞼の上に手をかざし、魔力を送り込んでいく。
安心したのかすぐに寝息が聞こえ始める。
「・・・・・・おやすみ」
の寝顔に昔を思い出した。
「・・・・っ」
今度は絶対になくさない、何をしても・・・・。
